生体認証型の金庫が開かなくなったら

私の実家は三重県の山間にあり、近くの大きな町までは、実に車で40分ほど掛かる田舎の集落です。実際、私は毎日高校に通うために、先に出した「大きな町」までバス通学をしていますが、普通の乗用車よりも足が遅いため、片道1時間掛けて通学しています。正直なところ、「毎朝往復で2時間かかるのはちょっときついなぁ」と思いながら、バスに揺られて町から家のある集落まで往復している次第です。
「街中にいる親戚の家にでも下宿させてもらえないか」と、一時期は本気で検討したのですが、今はすっかり諦めてしまいました。諦めた理由としては、家にいる祖母が少し認知症が入り始めてきて、その介護役が一人でも多い方が良いと思ったからです。

実際のところ、既に祖父が他界しているうちの家では祖母が「家長」の立場におり、色々な重要書類を管理しているようなのですが、それをしまっている生体認証型の金庫を開ける手順を忘れるようになってきたのです。父曰く、この金庫には家の利権関係の書類がすべて入っているので、もしもこれが開かなくなったらひどく大変なことになるとのこと。
そのような事態を避けるため、初孫ということで祖母に可愛がられていた私も、この生体認証型の金庫に登録がされており、実質家から離れることが出来ない状態になってしまっているのです。
私は、「なんでそんな面倒くさい金庫に大事な書類をしまうの?」と、祖母の了解の元で生体認証登録された当初は思っていましたが、もう今はすっかり諦観した気持ちになってしまっているのでした。